top of page
  • 羽佐間一潮

3.創業に向けた税理士の選択

更新日:2020年11月23日

 前回の「最初に決めること:会計帳簿」編では、自分が利用したい会計帳簿システムの選び方をご紹介しました。ご興味のある方はこちらを参照ください。


 さて、本テーマである「創業に向けた税理士」をご紹介します。まず中小企業庁が発行しています「2019年度版 中小企業白書※1」によりますと、起業準備者が相談しようとする専門家トップ3は以下のとおりです。

 ・金融機関

 ・士業(公認会計士、税理士、中小企業診断士)

 ・商工会議所

 金融機関は創業後も為替業務でお世話になりますが、登記する住所により将来創業する法人が相談した金融機関支店と同一の場所になるとは限りません(次回以降で説明します)。また、商工会議所は必ずしも会員になる必要はありません。残るは士業ですが、スモールスタートで起業する場合、日頃一番お世話になるのが税務会計業務です。創業後のサポートも視野に入れると、士業の中で税理士へ委託するのが理にかなっていると考えます。


 企業創業にあたり、定款準備や法務局への登記申請、その後の税務署や都道府県税事務所への法人設立届け提出など、法人登記の進め方に関してわからない点が多々発生します。創業後の適正な業務運営や決算処理の視点からも、この創業にあたって専門家のアドバイスは重要です。従い、創業準備のフェーズから届け出から全体の収支バランスを考慮した給与ボリュームの設定など、創業前に決めておくべき基準などについて、専門家である税理士にアドバイスを仰ぐことをお勧めいたします。


 では税理士をどのように選ぶか、これが悩むところです。創業支援業務を明確にメニュー化している税理士事務所もあれば、創業までのアドバイスは無償で対応してくれる事務所などさまざまです。ここでは、私がどのように現在の税理士とお会いし、選定に至ったかをご紹介します。ポイントは以下の3つです。

 ・どこに税理士事務所を紹介してもらうか?

 ・どのような税理士事務所を選ぶか(料金とサービスは千差万別)※2

 ・選定ポイント


【どこで選ぶか】

 「日本税理士会連合会」で公開している「全国税理士登録者数※3」によりますと、東京都の税理士事務所数は2020年6月末現在で1,276社です。この中で自分にあう税理士事務所を自力で選ぶのは現実的ではありません。


 私の場合、まず最初に利用したのが「1.創業準備」でご紹介しました、株式会社ソラボが提供している創業家向けWebサイト「inQUP※4」でした。同サイトでは税理士紹介サービスも掲載されており、こちらへ申請を行うことで東京の税理士事務所を紹介いただきました。面談も職場の近くまでお越しいただき、都合2回ほど行いましたが、残念ながら委託までには至りませんでした。会計帳簿として「会計freee®」のサービスは利用できない、と告げられたからです。


会計freee®を使うなら「税理士検索freee®」が便利:

 ならばと、「会計freee®」のWebサイトを覗いてみますと、税理士検索サイト「税理士検索freee※5」が備わっているではないですか。こちらの事業想定規模と地域を入力すると、税理士検索freee®を介して2社から応札メールを頂きました。

【どのような税理事務所を選ぶか】

 1社はスタッフ30名規模の税理士法人事務所で横浜の一等地にオフィスを構えている税理士法人事務所で、もう1社は現在もお世話になっております税理士事務所でした。


 まず最初に、横浜一等地にある税理士法人にお会いしました。オフィスは素敵で洗練されており、創業に向けた支援メニューも揃っておりました。会計freeeも利用できます。業務運営体制は、スタッフ30名がフロント業務として営業や受託企業向けの日常サポート業務などを担い、若干名の税理士がバックオフィス業務として対応していることがわかりました。こちらの税理士法人事務所の会計業務は、利用企業の会計データは税理士事務所内に取り込んだ後、弥生会計ソフトへデータをコンバートして処理すること、会計・税務相談は、税理士法人事務所の会議室で行うことを前提としておりました。


 ご紹介いただいたもう一社は、個人事業主として運営している税理士事務所でした。こちらの業務は、対面ではなくWeb会議によるリモートサポートを前提していることと、日々の会計帳簿から決算に至るまで自社の「会計freee」を元帳データとして利用できるのが特長でした。


自分にあったスタイルで選ぶ:

 日々の伝票処理など、経理業務すべてを税理士事務所へお願いすることを考えているのであれば悩む必要はありません。しかし、スタートアップ業務も「自分の経験」と考えている方、もしくはスモールスタートで極力経費を削減したいと考えている方は「会計freee®」、それに法人化する場合は「人事給与freee®」、この2つのサービスがあればご自身で運用できます。コストは月4千円弱です。このサービス利用を前提とした場合、お勧めする税理士事務所選定ポイントは以下の3点です。

 ・信頼できるか(必須要件)

 ・自社の会計データで完結できるか(私のこだわり)

 ・税理士といつでも直接相談できるか(開業後に認識した点)


【選定ポイント】

1)信頼できること

 これが一番難しいポイントですが、一番重要な選定条件です。1,2回の面接で「信頼に足るか」を判断するのは難しく、一定の範囲で紹介頂いた会社の信用を加味して判断する必要があります。理想は、信頼できる方からの紹介が一番です。

 結果として、現在当社業務をサポート頂いております天野税理士※6には、いまでも大変お世話になっており、また良心的な税理士顧問料で対応いただき、依頼して正解でした。全国のスタートアップ起業をサポートしているとの事ですので、興味がございましたらご相談してみてください。自信を持ってお薦めいたします。 


2)自社会計データで決算処理する

 2つ目のポイントは会計帳簿です。決算処理を行う場合、「自社の最終会計データから決算書類を作れるか」という点には最後までこだわりました。決算処理にあたり、データを外部ソフトに移出して、そちらのシステムで最終データを処理するのは気持ちが悪く、人的ミスやデータ不一致を招く一因になります。

 先月、創業初の決算処理が終わりましたが、会計帳簿を締めるにあたり、計上漏れの伝票処理や、売上計上日記載訂正など細部に渡り修正業務が発生しました。委託した税理士は当社の会計帳簿を参照いただき、当社の会計帳簿から直接決算処理を行いました。税理士向け会計freee®があるとのことで、当社データから直接決算処理が可能との説明を受けました。

 税理士が当社と違う税理士ソフトを用いて、かつその税理士事務所が数百社の会計帳簿を扱う場合、そこに少なからず人的リスクが内在します。「データ・インテグリティ」の視点からも考慮すべきポイントではないでしょうか。


3)税理士といつでも直接できる

 もうひとつ、税理士といつでも相談できるかという点も、創業にあたり重要になります。スタートアップ企業の場合、プレーヤー兼経営者のスタイルの方も多いのではないでしょうか。自分の時間を100%、ご自身の業務に割り当てている方もいらっしゃる事と存じます。其の場合は、税理士事務所へ出向いて相談する時間を確保するのは困難です。

 私の場合は、税理士との相談はすべて非対面での会議で実現しております。双方の都合の良い時間を調整し、Web会議を用いて自社のデータを画面で共有しながら、直に専門家のアドバイスをいただける現在の環境は効率的でありとても有効です。


 いかがでしたか、税理士の選び方につきましてイメージがつかめて頂けたのであれば幸いです。創業に向けて専門家のアドバイスを得られる環境が整いましたので、さあここから創業に向けてスタートします。


 次回からは会社設立に向けた「定款作成」から「法人登記」「銀行口座開設」へと進んでまいります。


今後の投稿予定


・会社の登記場所を決める

・定款を準備する

・法人登記

・銀行口座および法人クレジットカードをつくる

・創業融資を受ける

・登記後の手続き(各種届出)

・退社後のDC年金をイデコへ移管する


最後までお付き合い頂ければ幸いです。



※1:「2019年度版 中小企業白書」、2019年 中小企業庁


※2:「税理士顧問料・報酬・料金・価格の適正価格」、税理士紹介センターホームページより


※3:「税理士登録者数」、日本税理士連合会ホームページより


※4:「税理士の選び方」inQUPのWebページより


※5 「税理士検索freee」


※6 天野税理士事務所(税理士ドットコム登録サイト) 


閲覧数:66回0件のコメント

最新記事

すべて表示

4.定款を作成する

2020年、コロナ禍が世界を席巻し、収束したかにみえたウイルスも昨年末より第二波として猛威をふるい、ついに2021年、年が明けた1月8日、首都圏東京、千葉、埼玉、神奈川に対し緊急事態宣言が再発令されました。多くの創業事業者が事業の撤退を余儀なくされる中、お陰様で事業が存続できていることは感謝の一語に尽きます。これからも社会への貢献、お客様の成功とこれからの時代を担う若い人財の応援に努めて参ります。

2.最初に決めること:会計帳簿

突然、会計帳簿?と思われる方も多いかも知れません。これは私が30年以上のシステム構築経験から、データの保全と完全性、およびシステム保守が重要と考えるからです。 データが消失した場合その影響は計り知れません。重要な事業データを自社に置くことのリスクは、機器の障害による消失はもとよりサイバー攻撃による情報漏えいやEmotetなどのランサムウエアによる情報搾取など多岐におよびます。 シンプルな対策として

1.創業準備

(1)情報収集 創業準備を始めたのは、退社の4ヶ月前です。6月のボーナス月の月末を退社日と定め3月初旬頃より創業準備にとりかかりました。創業にあたり、あたりまえですがどのようなプロセスを踏む必要があるか一切わかりませんでしたので、まずは外観を理解すべく創業までのプロセスを紹介しているWebサイト情報から関連情報を収集しました。 色々と公開されていますが、とてもわかりやすく整理されていたのがこちらの

bottom of page